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Vol.10「ら、乱暴者てきみ〜 ショット ワンスター」

君も1度は見てるはず!?

Wライダース・・・一体どれほどの多くの人間がこの革ジャンを身に纏ったことだろう。そいつが醸し出す男の匂い、不良の匂いに憧れて・・・。
な〜んてちょっぴりキザな調子で始まった今回の月刊タフジャケですが、Wタイプのライダースジャケットは半世紀に渡りバイカーやミュージシャン他たっくさんの人に愛され続け、現在に至っています。もっともライダースジャケットに無縁の人でも一度や二度は映画やTV、マンガ等で目にしてるはず。「マッドマックス」、「ターミネーター」、「ターミネーター2」、「ワイルド7」に「北斗の拳」、「横浜銀蝿」に「堂本兄弟」・・・ほらね、見てるでしょ。
ゴリ子さんのワンスター。
ステアハイドタグを持つ70年代のモノだ。
とまぁ、色んなシーンに登場し、尚且つ多くの人々を惹きつけて止まないWライダースジャケットですが、敢えてそいつを身に纏おうする人たちにとって登竜門とも言えるブランドが、ショットではないでしょうか。
今回紹介するのはそのショットのWライダースの中で、代表的なモデルとも言える品番618、それも肩のエポレットに星をあしらった「ワンスター」です。

あっそうそう、本題に入る前に、いつものようにメーカーのご紹介。
ショット(Schott Brothers.Inc,)は、1913年、ロシア移民の家庭に育ったアーヴィン・ショットと弟ジョンのショット兄弟がマンハッタンのイーストブロードウェイで始めたレインコート屋が始まりです。1915年には自社のジャケットに好きな葉巻の名前から取ったブランドネーム「Perfecto」を付けています。
ショットが最初にレザーのライダースジャケットを製作したのは1928年であり、当時から50年代辺りまでは、かのベック社をディストリビューター(卸業者)として、またハーレーをリテイラー(小売業者)として販売していました。
また、1930年にはレザーで作られたパイロット用“ボマージャケット”を陸軍航空隊に納入しています。つまりショットは最も古いフライトジャケットメーカーのひとつでもあったんですね。(ちなみに1993年には米軍へのECWN3Bジャケット正式納入業者に指定されています。)
1950年にはライダースジャケットの最上級ラインに「Perfecto」ネームを冠するようになりました。以降、ライダースジャケットは勿論、ピーコートでも市場を拡大し、様々なアウターやスポーツウェア等も製作するメーカーとして現在に至っています。

“ライダース=不良”のはじまり

「えっ、ホンマ!?」と思われるかもしれませんが、「バイク=ライダースジャケット=不良のアイテム」というイメージが定着するのに一役買ったのが、何を隠そう今回紹介するショットのワンスターなんです。
肩に輝くワンスター。
「The Wild One」公開当時、Wライダースは最新のスタイルだった。
1953年12月に公開された映画「The Wild One」(邦題、乱暴者)で、マーロン・ブランド扮するジョニーがブルージーンズ、エンジニアリングブーツとともに身に纏ったのが、ショットのワンスターでした。この映画の公開以降、Wライダースジャケットは不良(タフな男)を象徴するウェアとして、若者の人気アイテムになったんですね。
今では考えられないことですが、当時はこのライダースジャケット、思春期の若者に悪影響を与えるとこのことで、社会問題化していまい、多くの学校で着用が禁止されちゃったそうです。ショットにとっちゃ、映画のヒットで知名度アップ、一気に売上拡大でホクホクかと思いきや、スタイルそのものが問題視され、学校で着用が禁止されたことなどの影響から、逆に売上がダウンしたようです。

しかし、1955年、当時の不良のカリスマであったジェームス・ディーンが自動車事故で死亡してしまうんですが、その悲劇が再びライダースジャケットブームに火を付けることとなりました。

今ではファッションの一スタイルとしてすっかり定着しているWライダースジャケットですが、多くの人がそこから何かしら不良の匂いを感じ取るのは、このような歴史があるからかもしれません。

70年代のワンスター

では早速ワンスターの紹介と着用リポートを・・・って行きたいんですが、今回は着用リポートができませ〜ん。だってこのワンスター、レディース用のなんだもんっ!読者の皆さま、ホントにスミマセン。今回のワンスターの所有者は当サイトのデザイン・CGI等を担当しているゴリ子さんなんです。ですので、今回は見て触ってのリポートでご容赦を。

前述した通り、ワンスター自体は50年代初頭にすでに存在しており、現在でも販売されている、いわゆる現行モデルでもあります。発売当初からワンスターは、品番618というモデルをベースに製造されつづけてきましたが、90年代半ば?あたりからは品番613というモデルに変わっています。半世紀にわたる歴史を持つワンスターですが、いわゆるビンテージとして扱われるのは70年代以前のモデル、中でもマニア垂涎と言われるようなワンスターは60年代以前のモノです。
70年代を代表するタグであるステアハイドタグ。
さて、このゴリ子さんのワンスター、どうやら70年代のモノのようです。ちなみに、ワンスターの製造年代をザックリ見分ける最も簡単な方法は衿の部分のタグを見ることです。
60年代までのモノは「黒タグ」と呼ばれるタグが付いています。これは、その名の通り黒色のタグで、PERFECTOブランドの表記に加え、牡牛にサボテンの刺繍がされています。(一部では黒タグでもPERFECTOブランドでないものもある)
これが70年代のモノになると、タグは「ステアハイドタグ」と呼ばれる牡牛の刺繍をあしらったものになります。こちらも60年代のモノと同様にPERFECTOブランドになっています。この牡牛の刺繍がバイカーに変わるのが80年代に入ってからです。

てな訳で、このゴリ子さんのワンスター、ステアハイドタグを持ち、ジッパーはTALONが使われています。あっきらかにレディースだと分かるのが、ジャケットのフロントが右前であることなんですが、インナーのキルティングの縫製にオレンジの糸が使われてるのもメンズとの差別化??
お約束のTALONジッパー
このワンスターは(というかショットのライダース全般に言えることですが)、言っちゃなんですが、使われている革はそれなりのモノ。ラングリッツと比べちゃかわいそうですが、高級感なんてありません。実際長い歴史を誇るショットですが、60年代以降マスプロダクトへと向かう時代の中で、そのライダースジャケットの革質は急速に落ちたと言われています。

ただ、チト見方を変えると、それなりのクオリティかもしれませんが、決して高級化を指向せず、いつの時代の若者にとっても無理なく手の届くライダースを作り続けたことこそが、不良伝説を作り上げ、ライダースジャケットを普及させたショットの真骨頂かもしれません。

伝説再び!?

決してハイクオリティではないけれど、そいつの持つ歴史・伝説と、リーズナブルな価格で、いつの時代の若者にも強烈な魅力を放つのがショットのWライダースジャケットです。

暗い話ばかりで先の見えない時代だからこそ、時にはショットのワンスターを身に纏い、時代を生き抜くタフネス=心の中の“The Wild One”を目覚めさせるのもいいかもしれません。
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