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Vol.9「燃えない、けど燃やしちゃダメっ!イスラテックス CWU-45/P」

織田裕二が着てた?

フリーになって以来、タダでさえ夜更かしだったのが更に時間グダグダ、時には「ああー寝られん、不眠症だ〜俺ぁーっ!」などと叫びつつしっかり昼まで寝てしまうこともある拙者でありますが、そんな拙者の夜のお供は深夜映画。これがまた、時には覚醒作用を、時には催眠作用をと、役に立つのか立たんのか・・・。そんな深夜映画なのですが、10月某日、新聞の番組欄をチェックしてる拙者の目にある映画タイトルが飛び込んできました。
ISRATEX(イスラテックス)社のCWU-45/P 耐熱アラミド繊維(ノーメックス)を使った米軍現用のフライトジャケットだ
「ベ、べ、ベストガイ・・・」
そう、公開当時あの大ヒット映画「トップガン」のバッタモン、パッチモンと噂された村川透監督、織田裕二主演の1990年の作品です。
「う〜むむ、こいつぁ強烈な催眠作用があるやもしれん。しかーし、バッタモンとはいえ日本にゃ前例のない航空自衛隊ヒーローモノ、フライトジャケット(フラジャケ)もきっと出てくるに違いない。よ、要チェックや。」と及び腰ながら見ることをココロに決めた拙者でした。
んで、結論を言いますと、映画の1/3にも満たないところで拙者の意識はなくなり、「よく寝れました。ありがとう、村川監督、織田さん、まだ若くてお水の花道に足を踏み入れてない財前さん」となったんですが、「チト待てよ、確かパイロットもグランドクルーもCWUを着てたような・・・」
調べてみると、どうやらこの映画で使われたのは米軍の現用フラジャケであるCWU-36/Pみたい。自衛隊には当然オリジナルのフラジャケがあるわけで、やっぱりバッタモンだったのね、ベストガイ・・・。
と、CWUネタで随分前置きが長くなりましたが、ここからが今回のお題、ISRATEX(イスラテックス)社のCWU-45/Pです。

現役です

おっと着用リポートに行く前に、CWU-45/Pについてちと解説をば。
CWU-45/Pは、現在米海空軍で使用されてるインターミディエイトゾーン(-10℃〜10℃)対応のフラジャケです。1973年に海軍が開発したもので、1976年には空軍が採用しています。海軍と空軍の両方が使ってる訳ですから、海軍にとっちゃG-1(そうです「トップガン」でオットコマエのトム・クルーズが着てたヤツ)の後継、空軍にとっちゃあのMA-1の後継ってことでしょうか。但し、G-1は現在も現役のフラジャケですが。
このCWU-45/Pをモデルに1978年空軍によって開発されたのがライトゾーン(10℃〜30℃)用の現用フラジャケCWU-36/Pです。こちらも海軍は勿論、陸軍でも採用されます。
これらCWUシリーズの最大の特徴は、デュポン社の開発した耐熱アラミド繊維(アロマティック・ポリアミド、商品名ノーメックス)を採用していることです。これは、航空機の進化に伴って、フラジャケへのニーズが「耐寒」から「耐火」、「パイロットを火から護れ」に変わってきたことの証しです。ちなみにこの耐熱アラミド繊維は400℃の熱に1分間耐えられるそうです。

イスラテックスのCWU-45/P

さて、今回紹介する拙者のCWU-45/Pですが、10年近く前に上野の中田商店にて購入したモノで、前述の耐熱アラミド繊維(ノーメックス)を使用した米国イスラテックス社製です。このイスラテックス社は正規の米軍納入業者だったのですが、90年代半ばに倒産?したようなのです。(このあたりの経緯は調べてみたんですが詳細は不明でした。ご存知の方いらっしゃいましたら是非掲示板等で教えていただければ幸甚です。)確かにイスラテックス社は89年、92年に米軍へのBDOs(Battle Dress Overallsの略、バイオ・ケミカル攻撃に対するディフェンス機能を持つ軍衣料)納入の正規業者になってるんですが、不良品を納入してたらしく、その件で国防総省から訴えられてました。1997年以降はミリタリーウェアの大御所、あのアルファインダストリーが正規業者としてCWU-45/Pを納入しています。(ちなみにアルファインダストリーはCWU-36/Pについても、80年代後半から米軍に納入しています。)
ジッパーはお約束のSCOVILL
このようないわく付きのイスラテックス社のCWU-45/Pですが、デッドストック、ユーズド以外にはもう手に入らないブランドになってしまったようです。ただ、CWU-45/P自体は前述の通りアルファインダストリーをはじめ、アヴィレックス、日本ではキャブクロージングからリリースされてますので、入手に問題はありません。

閑話休題
拙者のCWU-45/Pですが、フラジャケのお約束でラベルチェックしたところ、軍の仕様を表したミルスペックの上にDLA××××の表記が。これはDefense Logistics Agencyの略で、正規納入品につけられるとのこと。60〜70年代はDSA、50年代はQ.M.Cなんてのが正規納入品にはつけられてたようです。購入当時は「おっ、冬のバイクによさそうだな」「へ〜、燃えないんすか、ほ〜」程度の知識とノリで買ったんですが、そういや店員さんが「これね〜米軍が使ってるホンモノ・・・」とか何とか言ってたような。拙者にとっちゃ今さらの感があるお話ですが、まぁコネタということで・・・。

燃えない、けど燃やしちゃダメっ!

いざ着用・・・の前に忘れちゃいけないのが、コイツの最大の特徴である耐熱アラミド繊維(ノーメックス)のテスト。なんたって400℃に耐えるなんてフレコミの生地なんだから、それで作ったコイツを着りゃ弾を跳ね返すロボコップの如く、炎をシャットアウト・・・って思いますよね、夢多き青年なら。それにゴリジャケとしちゃ皆さまの期待を裏切れません。(って燃えちまったらどーすんだよっ!)テスト時間については、1分もあぶるは恐いので、一応30秒ということにしました。
で、テスト決行!(と言っても、何のこたぁない、100円ライターの炎の先端で拙者のCWU-45/Pの袖をあぶるだけなんですけど・・・。)
テスト後
それほど目立ちはしないが、長さ1cmほどの跡がしっかり残った
経過は、

開始後5〜6秒・・・「ほう、平気じゃん」
開始後8〜9秒・・・「何か臭いぞ・・・」
開始後12〜13秒・・・「ア、アカン、めっちゃ臭い、臭いぞーっ!」
開始後15秒・・・「ヤバイ、やめじゃーーーっ!!」

てな訳で、30秒の予定があっけなく15秒でテストは終了。確かに火は付かなかったけど、あぶったところは変質したようで、しっかり跡がついてました。これ以上やってたら燃え上がりはしなくとも炭化して穴くらいは開いてたかもしれません。「フライトジャケットバイブル」(¥1,500 イカロス出版)にも記載されてましたが、耐熱アラミド繊維(ノーメックス)は従来のナイロンに比べればはるかに熱に強いのですが、不燃ではないのです。だからコイツを着てりゃちょっとくらいの炎は大丈夫なんて決して思わないで下さいね。フツーの服よりゃ、ちと燃えにくい程度の認識でちょうどいいでしょう。

着心地はMA-1似?

コイツはMA-1の後継ジャケットだけあって、着用感もMA-1に似ています。早い話が、軽くてそこそこ暖かいってことです。ただ、耐熱アラミド繊維(ノーメックス)を使ってるせいか、MA-1に較べ若干重く、またゴワゴワしてます。また、MA-1は裏地もナイロンですが、コイツは布地なので、多少感触は違うかも・・・。
ただぶっちゃけてしまうと、防寒性はB-3、B-6といったシープスキンジャケットやダウン、新素材を使ったジャケットの方が高く暖かいですし、軽さもMA-1やダウン、新素材のジャケットの方が上です。
んじゃぁ、こいつのよさは・・・? それはバランスかもしれません。つまり抜群の耐熱性、耐久性を備えながら、日本の冬、ストリートでの使用なら必要十分な防寒性と、軽快さがあるってこと。運動性を犠牲にしたシープスキンジャケットや、耐熱性・耐火性が無いに等しいナイロン、新素材ジャケットにはない完成度の高さがCWU-45/Pにはあります。そりゃ、何と言っても米軍の現用ジャケットであることがコイツのバランスの良さ、機能性の高さを証明してますよね。

味わってみる?現用品の良さ

CWU-45/Pは、現役バリバリのフラジャケです。その魅力は何と言っても機能性・完成度の高さでしょう。現在ではノーメックスを使ったモノもアルファインダストリーからリリースされています。日本の冬にはピッタリのフラジャケでもあるので、皆さんもこの冬、CWU-45/Pの完成度の高さを味わってみてはいかが?
それにしても街でほとんど見ないんだよなぁ、CWUシリーズ着てる人って・・・。
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